昨年11月にウィーン(オーストリア)に行った時に驚いたことが2件あった。
最初に驚いたのは、路面電車の出入り口近くに乗っていた車椅子の年配の男性が電車を降りようとした時である。
乗り込もうとした外見の印象からはどうみても不良っぽい青年が、その男性を発見するとごく自然にその車椅子を引いて男性を下ろて何事もなかったかのように乗り込んできたのである。

もう件は、バスに乗ったときである。
バスに近寄って乗り込もうとしたときに、自動で入り口の扉が開いたので何も気にせず乗り込んで後方の席に座った。
少し前の席には、ペットボトルのドリンクを飲んで服装の雰囲気もちょっと悪ガキといった感じの中学生か高校生の男子二人が行儀悪く座っていた。
外は雪で非常に寒く乗客はそれだけでガラガラの状態。
驚いたのはバスが発車し何番目かのバス停で年配の女性が、乗り込もうとしてバスに近づいてきた時だった。
なんとなくその悪ガキたちを見ていたら、乗り込む年配の女性を見つけたと同時に入り口のドアを開けるボタンを押し、ドアを開けたあげたのである。

この2件の出来事は、実に衝撃的で少なくとも今の東京ではあまり見にすることがない。

外見からはとてもそんなことをしそうもない若者がさりげなくとった行動は、昔の日本では当然だった他人を思いやり、目上の人を敬う気持ちであり、日本が失いかけている大切なものを見せつけられた気がした。